個人クリニックの開設医師が医療法人化をしない場合に直面するリスクとは?
はじめに
開業から数年が経ち、診療も軌道に乗り始めた個人クリニック。
「まだ法人化は必要ない」と考えていませんか?
実は、法人化を先延ばしにすることで、知らないうちに 大きな損失や経営上のリスク を抱えるケースが少なくありません。今回は「法人化しない場合に考えられるリスク」を整理しました。
リスク①:重くのしかかる税負担
個人事業主は 累進課税制度 が適用されます。
所得が増えれば増えるほど税率が跳ね上がり、院長の手取りが減少。
- 年収2,000万円を超えると、税率は50%近くに
- 医療法人なら法人税の適用で、一定以上の所得では節税効果が大きい
- 節税できずに資金繰りが圧迫され、将来への投資余力が減少
→ 税務面での不利は、経営の持続性に直結するリスク となります。
リスク②:銀行融資や信用面での限界
個人クリニックは、金融機関から見れば「個人の事業の延長」です。
- 融資枠が限られる
- 設備投資や新規開院の際に資金調達が難航
- 患者やスタッフからも「小規模な診療所」という印象を持たれがち
→ 法人化していないことで、成長の機会を逃してしまうリスク が潜んでいます。
リスク③:事業承継・相続のハードル
個人事業は「院長個人の財産」です。そのため承継時には相続税や贈与税が大きくのしかかります。
- 子どもに承継する場合も、多額の税負担が発生
- スタッフや患者にとっても「この先どうなるのか」という不安要素に
- 後継者がいない場合、廃院やM&Aが難航
→ 承継問題を先送りすると、いずれ大きな経営リスクに発展 します。
リスク④:福利厚生・スタッフ定着力の弱さ
個人経営では、福利厚生制度の整備に限界があります。
- 退職金制度がない
- 福利厚生の充実が難しく、人材確保・定着に不利
- 結果的に優秀な人材が集まらず、クリニックの成長にブレーキ
→ 法人化すれば福利厚生を整えやすく、人材面での競争力が増す のに対し、個人のままでは採用難が続くリスクがあります。
リスク⑤:万一のトラブル時に責任が重くのしかかる
個人事業では、院長が無限責任を負う立場です。
- 医療トラブルや経営上の債務がすべて個人に直結
- 法人化していれば、リスクを法人に分散可能
→ クリニックを守るための「リスク分散」という観点でも法人化は不可欠 です。
✅ 上記の①~⑤のリスクを鑑み、医療法人化を検討すべき個人クリニックの医師に向けての診断表
- 3つ以上YES → 今すぐ法人化を検討すべき段階!
- 1〜2つYES → 近い将来法人化の準備が必要
- 0 まだ急ぎではないが、将来のため知識を持っておくことが安心
まとめ
個人クリニックのままでは、
- 高額な税負担
- 融資の制限
- 承継や相続の困難
- 人材確保の不利
- 万一の責任集中
といったリスクを抱え続けることになります。
逆に医療法人化すれば、
- 節税効果
- 信用力アップ
- 承継の円滑化
- 人材採用力の強化
- リスク分散
という大きなメリットを享受できます。
「今はまだ大丈夫」と先延ばしにするのではなく、経営が安定している今こそ法人化の最適なタイミング と言えるでしょう。